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上野公園を通るたび、シロクマの姿を思い浮かべてちょっと優しい気持ちになります。
“人間は自分が楽に生きられる場所を求めていいんだよ”っていうメッセージをシロクマのイメージで受け取ったからです。
不登校の子どもたちもその家族も「そうだよね!」って思える名言は梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」が伝えてくれたものでした。
この本を手にとったきっかけは、ラジオです。
夏休みの終わり、新学期に学校に行きたくない・行けない子どもたちの存在が話題になる時期のこと。
作家の梨木香歩さん自身が作品に込めた想いを語っておられました。
『西の魔女が死んだ』は不登校女子中学生とおばあちゃんの物語
『西の魔女が死んだ』は、不登校になった中学生の女の子が主人公。
彼女が母親の母親である魔女のおばあちゃんの家で暮らすひと夏を描いた作品です。
梨木香歩さんのデビュー作で、当時はかなり話題になってベストセラーになったようですね。
『西の魔女が死んだ』は、梨木香歩による日本の小説。1994年に単行本が、2001年には新潮文庫より文庫本が出版された。日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、第44回小学館文学賞受賞。 2008年6月に実写映画が公開された。
おばあちゃんと孫娘のお話なので人間関係や会話の内容がわかりやすいです。
だから普段は読書に興味がないお子さんでも読みやすいと思います。
『西の魔女が死んだ』の心に残る名言とは?
『西の魔女が死んだ』ではおばあちゃんが語る言葉が本当に素晴らしいんです。
いくつも名言があるんですが、最も有名な一節にシロクマが出てくるんですよね。
梨木さんのお話では、「どうしても自分が書かなくてはいけない」と思って書いた部分だということでした。それがこちら。
『自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。
サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。
シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか』
梨木さんは「学校に行きたくない子どもたちに向けて今回ご紹介した言葉を贈りたい」ともおっしゃっていました。
不登校でいいと思うんです。学校じゃなくても自分が楽しく生きられる場所があるはずです。
シロクマにはハワイより北極が暮らしやすいはずだ、って誰にでもわかることですよね?
人間だって自分が生きやすい場所を求めて何が悪いんでしょう?
楽に生きることは、がんばらないこととは違うと思います。
ずっと無理をしていると生きているのが苦しくなるよってことじゃないでしょうか。
人間は自分のいたい場所を自分で選び取れるんだよ、っていう当たり前だけど忘れられてる可能性を教えてくれる言葉だと思います。
私はこの言葉を自分がいる場所に違和感を感じている人すべてに伝えたいです。
シロクマがくれた気づき
梨木さんが読み上げた言葉から上野動物園のシロクマを連想しました。
気だるい表情で日陰にごろんと横になり、手前にある水槽に入るのさえ面倒そうな、動かないシロクマ…
苦労なくエサが手に入るけれど自由のない上野動物園は、白い氷原と冷たい海が続く北極から遠く隔たった場所です。
シロクマは自分がいる場所を選べませんが、人間は自分の居場所を選べます。
自分はいちばん生きやすい場所を選んで生きてるかな?
自分の幸せは、どこでどんな生活をすると感じられるものかな?
って改めて深く考えさせられる言葉ですよね。
自分がいちばん生きやすい場所って、ゆったりと落ち着いて呼吸できる場所?安心して過ごせる場所?あったかい気持ちになれる場所?
どんな場所でしょうか。
安心して自分自身でいられる場所、自分の「北極」を見つけられたら最高ですよね。
それを「幸せ」っていうんだと思います。
まとめ
梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』のおばあちゃんは本当に魅力的で、ご紹介した以外にも心に残る言葉がたくさん出てきます。
文庫本だと、その後のまいの物語「渡りの一日」も併せて収録されているのでおすすめです。
二つのお話を合わせても226ページと非常に短いですし、何よりストーリーが面白いのであっという間に読めてしまいます。
近年は読書感想文の課題になったりと、発売から20年以上たった今も読み継がれている不朽の名作です。
自分らしくいられる場所を見つけたら、生きていることに感謝したくなるんじゃないかなあ。
「もっと自分らしくいられる場所があるはずだ」という想いがあるんですよね。
あきらめずにそういう場所を探し続けようと思います。