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実は薬物だけじゃなく、不登校もゲームもネットも同じ依存症のメカニズムが根底にある、ってご存知ですか?
槇原敬之さんや沢尻エリカさんの違法薬物使用が話題になりましたが、自分の子どもがあそこまで重症になる前に何とかしたいですよね。
依存症の克服のためにはまずメカニズムを知ることでしょう。さらにそこからの回復とはどういうことか?私が学んだ内容をお伝えします。
「ネット・ゲーム依存」の講座に講師として登壇されたのは八木眞佐彦さん。
法務省で薬物依存関連の部署におられたそうで、現在は周愛荒川メンタルクリニックの部長として依存症親子のケアをしている方です。
依存症のメカニズム
配布された資料によると、依存症とは「心的苦痛や孤立感を緩和するために“ある行動”が必要になっている状態」です。
“ある行動”が沢尻さんの場合は薬物だっただけで、ゲーム・ネット・アルコール・パチンコに依存する人もいます。
依存症はその人の行動の部分だけに注目した表現で、本当の問題は心的苦痛や孤立感にあります。
東日本大震災のあと、漁師さんたちにアルコール依存やギャンブル依存が増えたのをご存知ですか?
漁ができなければ生活が成り立ちません。船の借金もあるでしょう。
漁師さんたちは「稼げないけどどうしようもない」という事実の辛さから一瞬でも逃れたくてアルコールやギャンブルに依存したんですね。
これが依存症のメカニズムです。
彼らを「弱いから依存症になった」と責める人はいないと思います。
依存症は、弱いからなるのではないのです。
不登校・ネットやゲーム依存からの回復に必要なもの
「依存症の人は、弱いから依存症になるのではありません。依存症は苦痛やSOSの表れです。
不登校は大変立派な行為です。お子さんをほめてあげてください。」
八木さんはこの言葉で講座をスタートしました。
講座のタイトルは「ちゃんとしりたいネット・ゲーム依存」~その重症化予防と回復のために~というもの。
私は毎日娘に「Youtubeが見たい」と言われ連日1時間も2時間も見せているのが心配になって参加しました。
ゲームをする時間をどうやって短くするか?という話だと思っていたため、不登校が出てきて不意をつかれてびっくり。
八木さんの話はこう続きます。
「依存症の人の回復とはどういうことかわかりますか?目的は幸せになることです。」というんです。
つまり依存症はそれだけ不幸で辛くて苦痛に満ちたものであるということなんですね。私は思わず涙ぐんでしまいました。
不登校も依存症なのだとしたら、それは家庭への依存でしょう。
学校がいやでいやでたまらない、ちょっと極端ですが地獄のような場所だと思った子供が不登校になる。
その気持ちを伝え、不登校という行動でそこから逃れる選択をした子どもは立派だという意味だったのです。
依存症から回復するためには、その人の苦しさや孤独感がなくなることが必要だそうです。
私は次女に弱い部分があるから不登校になったのだ、もっと強くなってほしいと思ってきました。
でも違いました。
「わたしは苦しい。辛い。」と言える強さがあったんですね。
彼女が気持ちを伝えてくれたとき、学校を休ませたことや私が仕事をやめて一緒に過ごしたことは正しかったと改めて思いました。
依存症という病気には治療が必要
ちょうど沢尻さんが薬物を所持して逮捕された後でしたので、その話も出ました。
八木さんは日本のマスコミの対応を非常に厳しく批判しました。
理由を要約すると
- 彼女は10年以上薬物を使ってきたので明らかに依存症
- 2014年にWHOは『あらゆる薬物問題の非犯罪化』を勧告
- アメリカではAddictionという“依存症”を表す病名は削除された
- 正しくは「物質使用障害」という
- 物質使用障害に必要なのは適切な治療
- 日本のマスコミはこういった正しい知識を伝えない
沢尻エリカさんは見世物にされるべきではない、彼女は病気なのです。と繰り返し強調されていました。
ピエール瀧さんの話題も出て「あの人は好奇心で使ってみたようですね。かつての細野晴臣さんや高橋幸宏さんと同じですね」とも。
テレビでは同じようにバッシングを受けていたふたりですが、実態は全く違っていました。
槇原敬之さんも長期間使用しているようですから依存症であることは間違いないでしょうね。
依存症を生む原因は私たちの心の余裕のなさ
依存症が生まれる背景には心の苦痛や孤独感の問題があるわけですが、なぜ依存が注目されるのでしょうか。
理由はいくつかあると思いますが、覚せい剤取締法違反を始めとする薬物事犯が減らないこと、そしてゲームやネットへの依存が社会問題化していることが大きいかもしれません。
誰もが安心・安全な社会で暮らしたいですし、今の大人の将来を支えるのは若者たちですから気になりますよね。
しかしそうならないのは日本の社会そのものに問題があるというのです。
八木さんのお話では「大人の過労が多い国は子供の自殺が多い」とか。
アジアでは「日本・韓国・台湾」が突出して多く、中国は統計が出てこないが恐らく相当多いだろうとおっしゃっていました。
これらの国で共通して起きていることは
- 過剰な受験競争(子供をなじる、叩くなどの教育虐待)
- 運動部の成果へのこだわり(教員のゲーム依存)
- 仕事依存(家族団らんを犠牲にして会社に滅私奉公し自己肯定感を維持)
など、すべて大人の依存や心の余裕なさが原因のものです。
つまり大人が苦痛や辛さを抱えて生きてるから大人がすでに依存症になっていて、子どもに影響が出ているんですね。
八木さんの仮説では
- 家庭や学校で孤立しがちで自信がない子が強くなりたい、スゲーって評価されたいとき戦闘系ゲームに熱中
- 周囲に理解者がおらず自分には価値がない・寂しいと追い込まれた子がSNSに依存
- トラウマ体験を鎮静化しリラックスしたい子は漠然とYouTube連続閲覧
こんな傾向を感じているそうです。
大人は自分たちの依存には気が付かずに、子どもや追いつめられた人を心配しているというわけ。
教育虐待、教員のゲーム依存、仕事依存など新しい言葉に驚くと同時に納得しかない…という状態で聞いていました。
うちの夫は間違いなく仕事依存ですし、私もフルタイムで働いていたらすぐ仕事依存になるタイプですね。
教育虐待は、私が両親から受けた内容もあてはまるかも。教えてもらってよかったです。
今の日本から依存症がすぐになくなるとは考えにくいですね。
依存症の人の心に寄り添うことが克服のきっかけに
講座の中でとても興味をそそられたのが、実際にポルトガルで成果をあげた取り組みです。
麻薬を使い始める若者たちにアプローチし、麻薬使用者を減らすことに成功したそうです。
深夜に保健師さんやソーシャルワーカーさんのグループが公園を巡回し、薬物を使用している若者を探します。
何をするかというと、麻薬を少し打ってあげるのだそうです!
そうすることで「わたしたちはあなたの味方だよ」と伝えるというんですね。
チラシを渡して、来てくれたらコーヒーとクッキーでおもてなしをするんだそうです。
目的は来てくれた若者と信頼関係を作り、ちゃんと話を聞いて根本的な問題を解決すること。
なるほどな~と思いました。
若者は自分では解決できない問題を抱え、目の前の苦痛から一時的に逃れるため薬物を使用しているだけ。
ちゃんと話を聞いてもらい、問題を解決できる可能性が見えれば立ち直れるでしょう。
これは効果がありそうです。日本では実現しそうにないですがww
依存症を発症しやすい環境をつくらないことが大切
今回の判決の報道では、沢尻エリカさんは病院で薬物の治療を受けたようです。
再び依存にならない環境を作ることがとても大切だとおっしゃっていました。
依存症を発症しやすい環境があるそうで【楽園ねずみ】の実験について教わりました。
カナダ・サイモンフレーザー大学で行われた実験
異なる環境で飼育するねずみに「普通の水」と「モルヒネ水溶液」を与え、約2ヶ月間観察
「楽園ねずみ」
広く心地よいケージに植物の壁紙、ウッドチップをしきつめ複数の雌雄で飼育
「植民地ねずみ」
水を飲むのもやっとの狭苦しい金属ケージで一匹ずつ飼育
結果はどうなったと思いますか?
「楽園ねずみ」は、本来のねずみらしく活動しモルヒネ水は避けて飲まなかったそうです。
「植民地ねずみ」は、ずっとモルヒネ水を飲み続けて24時間酩酊状態に。
しかし「植民地ねずみ」を「楽園ねずみ」のケージに入れると、2週間ほどでモルヒネ水を飲まなくなったのです。
つまり、ゲーム障害・ネット依存などの発症予防や回復に環境のケアや見直しは非常に効果があるんですね。
逆にいえば、環境を変えられないと依存から抜け出せなかったり再発したりする可能性が高いということでしょう。
楽園ねずみのように暮らすということは、人間本来の活動をするということ。
良く食べよく眠り、体を清潔に保ち、家族や周囲の人と助け合って笑顔で暮らすことでしょうか。
八木さんはこうもおっしゃていました。
「ゲームとかネットとか、ひとつのものだけに依存するのでなく、できるだけ現実の社会で依存できる場所をいくつか持てるといい」と。
確かに、家族だってお互いへの依存で成り立っているわけですから。
⇩もっと知りたい方は、ぜひ八木さんの本をどうぞ。
八木さんはマスコミの姿勢を批判していましたが、NHKの「ハートネットTV」のスタッフは例外だとも言っていました。
⇩彼らは本気で学んでいる、ぜひHPを見てくださいということです。
https://www.nhk.or.jp/heart-net/program/heart-net/
家族を大切に、できるだけ笑顔で幸せに暮らしたいですよね。
子供の不登校で苦しい思いをしましたが、娘が不登校という形で私に依存してくれたんだと思うと親としては少し救われる気がしました。
母親ですから、私が守ってあげられる間や娘が守られたいと思う時はいつでも守ってあげたいんです。
そのために家庭を、子供にとって楽園ねずみの「楽園」のような場所にしていきたいと思います。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました。